1. 感染性廃棄物とは?
感染性廃棄物とは、医療機関や検査機関などで発生し、人に感染症を引き起こすおそれのある廃棄物を指します。主に患者の血液・体液・排泄物が付着した物品や、鋭利な医療器具(注射針・メスなど)、病理廃棄物(臓器や組織片)などが含まれます。
これらの廃棄物は、適切に処理しないと院内感染のリスクが高まるだけでなく、処理業者や地域住民への感染拡大、環境汚染を引き起こす可能性があります。
また、感染性廃棄物は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」に基づき、排出事業者(=医療関係機関等)に適正な処理責任が課せられています。そのため、分別・保管・処理の各段階で、法令やガイドラインに沿った対応が求められます。当社では、法令に準拠した安全・確実な感染性廃棄物処理サービスを提供しています。
| 医療関係機関等※から排出される廃棄物 | 概要 |
|---|---|
| 感染性廃棄物 | 感染性廃棄物の判断フロー(①形状、②排出場所、③感染症)で判断し該当した廃棄物 |
| 非感染性廃棄物 | 医療行為等に伴って生ずる廃棄物のうち、上記に該当しない廃棄物 |
| 上記以外の廃棄物 | 紙くずなど |
※病院、診療所、介護老人保健施設などの10種類の施設(施行令別表第1の4の項・施行規則第1条第7項)
感染性廃棄物の判断フロー
感染性廃棄物は、その性状に応じて以下のように分けて処理します。
① 形状
廃棄物が以下のいずれかに該当する場合は「感染性廃棄物」
- 血液、血清、血漿及び体液(精液を含む。)(以下「血液等」という。)
- 病理廃棄物(臓器、組織、皮膚等)(注1)
- 病原体に関連した試験、検査等に用いられたもの(注2)
- 血液等が付着している鋭利なもの(破損したガラスくず等を含む。)(注3)
↓
② 排出場所
廃棄物が以下に該当する場合は「感染性廃棄物」
感染症病床(注4)、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室及び検査室において治療、検査等に使用された後、排出されたもの
↓
③ 感染症の種類
廃棄物が以下のいずれかに該当する場合は「感染性廃棄物」
- 感染症法の一類、二類、三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の治療、検査等に使用された後、排出されたもの
- 感染症法の四類及び五類感染症の治療、検査等に使用された後、排出された医療器材等(ただし、紙おむつについては特定の感染症に係るもの等に限る。)(注5)
↓
①②③いずれにも該当しない場合(注6)
「非感染性廃棄物」
ただし、疑わしい物は「感染性廃棄物」として扱うのが原則です。
(注) 次の廃棄物も感染性廃棄物と同等の取扱いとする。
・外見上血液と見分けがつかない輸血用血液製剤等
・血液等が付着していない鋭利なもの(破損したガラスくず等を含む。)
(注1) ホルマリン固定臓器等を含む。 (注2) 病原体に関連した試験、検査等に使用した培地、実験動物の死体、試験管、シャーレ等 (注3) 医療器材としての注射針、メス、破損したアンプル・バイアル等 (注4) 感染症法により入院措置が講ぜられる一類、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の病床 (注5) 医療器材(注射針、メス、ガラスくず等)、ディスポーザブルの医療器材(ピンセット、注射器、カテーテル類、透析等回路、輸液点滴セット、手袋、血液バック、リネン類等)、衛生材料(ガーゼ、脱脂綿、マスク等)、紙おむつ、標本(検体標本)等 なお、インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)伝染性紅班、レジオネラ症等の患者の紙おむつ(参考1参照)は、血液等が付着していなければ感染性廃棄物ではない。 (注6) 感染性・非感染性のいずれかであるかは、通常はこのフローで判断が可能であるが、このフローで判断できないものについては、医師等(医師、歯科医師及び獣医師)により、感染のおそれがあると判断される場合は感染性廃棄物とする。
2. 医療関係機関等に求められる処理の流れ
感染性廃棄物の処理は、以下のような基本的な流れに沿って行います。
| 1 | 発生(使用済み物品の排出) | 診療・検査などの医療行為により感染性廃棄物が発生します。 |
| 2 | 分別・収納 | 感染性廃棄物か否かを判断し、種類別に専用容器へ適切に収納します(鋭利物、液状、固形など)。 |
| 3 | 一時保管 | 遮断・密閉・施錠された専用スペースにて、安全に保管します。保管期間は原則として長期にわたらないように管理します。 |
| 4 | 収集・運搬(委託) | 許可を受けた産業廃棄物収集運搬業者へマニフェストに基づいて適正に引き渡します。 |
| 5 | 最終処理(焼却・滅菌など) | 処理業者の施設にて、高温焼却やオートクレーブ滅菌などで確実に無害化処理されます。 |
3. 分別・保管・容器の基準
感染性廃棄物の分類と分別
感染性廃棄物は、発生時点での確実な分別と、安全な容器による保管が重要です。
| 分類 | 例 | 備考 |
|---|---|---|
| 鋭利物 | 使用済み注射針、メスなど | 貫通防止容器で厳重に保管 |
| 液状物 | 血液・体液・透析廃液など | 密閉容器に収納 |
| 固形物 | 血液が付着したガーゼ、手袋、注射器(針なし)など | 汚染物は密閉し、飛散防止を徹底 |
| 病理廃棄物 | 切除臓器、組織片など | 原則、焼却処理対象 |
容器の基準
感染性廃棄物は、法令およびガイドラインに従った専用の容器に収納する必要があります。また、収納する容器や袋には「バイオハザードマーク」および「感染性廃棄物」のラベル表示が推奨されています。
| ■ 赤色 | ■ 橙色 | ■ 黄色 |
|---|---|---|
| 液状又は泥状のもの | 固形状のもの | 鋭利なもの/分別排出が困難なもの |
| 液漏れ防止のため密封性が高く、丈夫なプラスチック製 | 厚手で破れにくく、色分けされた専用袋を使用 | 耐穿刺性・密閉性のあるハードタイプの容器 |

なお、「非感染性廃棄物」の梱包容器には「非感染性廃棄物」であることを明記したラベルを付けることが推奨されています。(下記は例)
非感染性廃棄物
| 医療機関等名 | |
| 特別管理産業廃棄物 管理責任者 | |
| 排出年月日 |
一時保管のポイント
- 密閉・施錠できる場所で、立ち入り制限が可能な構造
- 漏洩・破損・飛散のリスク管理がなされていること
- 保管期間は最短での搬出を基本とし、長期保管は避ける
- 温度や衛生環境にも配慮(特に夏季や長期休暇時)
感染性廃棄物の保管場所には、関係者の見やすい箇所に「感染性廃棄物の保管場所であること」を表示するとともに、取扱いの注意事項を記載する必要があります。(下記は例)
注意
- 感染性廃棄物保管場所につき関係者以外立ち入り禁止
- 許可なくして梱包容器等の持出し禁止
- 梱包容器等は破損しないように慎重に取扱うこと
- 梱包容器等の破損等を見つけた場合は下記へ連絡して下さい
管理責任者:◯◯◯◯
連絡先 :◯◯◯◯
4. 委託処理について
感染性廃棄物は、医療関係機関等が自ら処理することは原則できず、法令に基づいた許可業者へ処理を委託する必要があります。委託にあたっては、適正な契約手続きと、収集から最終処分までの確実な管理体制の構築が不可欠です。
委託先業者 選定のポイント
感染性廃棄物の収集運搬および処分は、産業廃棄物処理業の許可を持つ業者に委託しなければなりません。
- 産業廃棄物処理業の許可番号・有効期限
- 感染性廃棄物の取り扱い実績
- 収集運搬・処分の体制(専用車両・処理施設の種類)
- 緊急時の対応能力・連絡体制
- マニフェスト制度の対応有無
当社は、感染性廃棄物に関する許認可を取得し、多数の契約実績があります。
委託契約とマニフェスト管理
感染性廃棄物の処理を業者に委託する際は、「書面による委託契約書」の締結が法律で義務づけられています。また、排出から最終処理までの流れを記録・追跡するために、「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」の交付が必要です。
- 契約書に明記する事項について
- 廃棄物の種類・数量
- 収集・運搬・処分の各業者情報
- 委託期間、処理方法、責任の範囲 など
- マニフェスト(紙または電子)について
- 排出から最終処理完了までの各工程で記録を残す
- マニフェスト交付状況の定期的な確認・保存が必要(5年間)
- マニフェストが定められた期間内に送付されない場合や、記載漏れ、虚偽の記載がある場合は、処理業者に確認の上、都道府県知事に報告する
医療関係機関等が医療廃棄物を処理業者に引き渡す際には、立ち会いと確認を行います。また処理業者に引き渡した後であっても、最終処理が完了するまでは排出事業者(医療関係機関等の施設)の責任が継続します。
当社では、契約・マニフェスト運用のサポートも行っております。初めての方も安心してご相談ください。
処理証明
最終処理が完了した際には、マニフェストを通じて排出事業者に処理完了通知が届きます。これにより、排出事業者としての責任が完了し、処理の透明性・証明性が確保されます。
よくある質問(FAQ)
Q. 感染性廃棄物と一般の医療廃棄物の違いは何ですか?
感染性廃棄物は、「感染性の病原体を含み、人に感染を引き起こすおそれのある廃棄物」であり、法令により特別な取り扱いが必要です。一方、感染性のないガーゼや包装材などは、一般の産業廃棄物(非感染性の医療廃棄物)として扱われます。判断に迷う場合は感染性廃棄物として扱うのが原則です。
Q. 処理できないものはありますか?
一般的な感染性廃棄物であれば処理可能ですが、以下のようなものは別途対応となる場合があります。これらは別途、専門処理業者の手配が必要となりますので、事前にご相談ください。
- 医薬品(毒薬・劇薬を含む)
- 放射性物質・化学薬品
- 爆発物・麻薬等
Q. 容器や専用袋は用意してもらえますか?
はい、弊社では感染性廃棄物用の専用容器や袋も取り扱っており、必要な数量を提供可能です。初回契約時に現場の状況を確認し、最適なサイズ・数量をご提案いたします。
Q. 回収の頻度やスケジュールは決まっていますか?
排出事業者の規模や排出量に応じて、定期回収(週1回~月1回)からスポット回収まで柔軟に対応しています。緊急の追加回収にも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。
Q. 産業廃棄物管理票(マニフェスト)に不安があります。サポートしてもらえますか?
はい、弊社では紙・電子マニフェストの発行・記録管理をサポートしています。運用方法についても導入前に丁寧にご説明し、ご希望に応じて定期的な帳票の確認も代行可能です。
Q. 処理完了の証明はどのように確認できますか?
マニフェスト(紙または電子)により、最終処理業者での処理完了が確認できます。必要に応じて、処理完了報告書や証明書の発行にも対応いたします。
その他、ご質問や不安な点がありましたらお気軽にご連絡ください。
特別管理産業廃棄物(許可証)

